ベトナムに行きたい

娘がブラックホールの謎に熱中しているので、わかりやすい本を探しに紀伊国屋に出かけた。結局、宇宙関連の本は小学生向けばかりでイメージしていたレベルのものはなかった。好奇心爆発状態の子どもの目は、子どもなら誰でもそうだが、とても綺麗なのでもっと見ていたかった。残念。
折角なので何冊かまとめ買いした中に、子どもの頃、親父の書庫にあった懐かしい本の単行本版を見つけた。それがこれ。

ベトナム戦記 (朝日文庫)

ベトナム戦記 (朝日文庫)

開高健芥川賞受賞後にベトナム戦争を取材したルポ。子供心に南ベトナム北ベトナム、ベトコン、アメリカの関係がわからず、混乱しながら読んだ記憶がある。読書の記憶はすっかり飛んでしまっているのだが、数年前にベトナムへ行ったことを思い出して、撮影したDVテープを探しだして見てみた。するととんでもない体験をしていたことを思い出した。
旅行はサイゴン改め、ホーチミンが行き先。上記のベトナム戦記で紹介されているベトコンのトンネルを見るのとベトナム料理を死ぬほど食べるのが俺の主目的。奥さんは当時ブームだったベトナム家具を仕入れることが目的だった。宿はフランス資本の美容室で働いていた奥さんの友人宅でお世話になったのだが、旅行でテンションが高いのにプラスして、この友人がとんでもない美人だったことにすっかり舞い上がってしまった。この友人は人妻なのだが、旦那は古着のバイヤーでほとんど帰ってこないらしく退屈していたようで、滞在中夜な夜な遊びに繰り出す訳だ。ところが、とんでもない美人なのでベトナム人はもちろん、タイ人やら、ミャンマー人やら、オーストラリア人*1やらが混じって訳がわからない状態で楽しかった。そしてぶっ飛び状態が災いして正常は判断ができなくなった我々夫婦は到着4日目に騒動に巻き込まれることになった。

ホーチミン巡りも一段落したので、件の美人人妻友人の勧めで、ニョクマムの産地で有名な中部のニャチャン付近のリゾート?に1泊で出かけた。その時乗り合いバスで知り合ったベトナム風ヤンキー君と仲良くなって、現地に着いてコテージ村にチェックインするとビーチに飲みに行こうということになった。そのヤンキー君は美人のベトナム女子大生を2人連れていたのでついていったのは奥さんには内緒だ。てっきり数人で行くのかと思ったら、わらわらとホンダ(ベトナムではバイクのことをホンダと呼ぶ)に乗ったヤンキー君の友人が15人ほど集まってきた。そのホンダに2人乗り上等、3人乗りも当たり前状態でノーヘルでビーチへ向かった。地方のベトナムは道路状態は悪いのはもちろん、バイク改め、ホンダは雲霞のごとく、さらにぼろぼろのトラックやバスが我が物顔で走っていた。本当に死ぬかと思ったが、俺はもちろん、奥さんまでテンションぶっ飛び状態が続いていたので、ケセラセラ状態でまったく気にしなかった。ここで帰れば良かったのだが…。
ビーチでさんざん飲んだくれたあと、ヤンキー君の自宅マンションでどんちゃん騒ぎをして、その後カラオケに行こうとなり、近所の洋館を改造したカラオケ館?に入って、再びどんちゃん騒ぎとなった。日付が変わってそろそろ帰ろうとなり、伝票を店員がいそいそと持ってきたとき事件が起きた。
俺も酔っぱらっていたので、はっきりと見えた訳ではないのだが、日本円で15万ぐらいの金額が書いてあったように思う。こりゃ払えんと思って、ヤンキー君に伝票を回すと、彼がいきなり切れた。どこに隠し持っていたのか、ナタというか牛刀というのか、でかい包丁のような物を取り出し、奇声を上げて振り回し始めた。それまでヤンキー君は俺と話す時は英語だったのだが、ベトナム語で叫んでいるので、さっぱり何を言っているのかわからないが、「こんなの払えるか手前ら払いやがれ」というようなことを叫んでいるらしい。そのうち、連れの女子大生の首根っこを捕まえて、首を切り落とす勢いで、女の子の髪の毛を切り始めた。女子大生はめちゃめちゃ泣いていて何か哀願している。その時、なぜか前述のベトナム戦記のことを急に思い出した。銃殺やお坊さんのハンガーストライキの話を思い出したのだが、酔っぱらっていたので、頭に残ったのは「ベトナムでは人の命は安い」というイメージ。こりゃやばい。本当に殺しちゃうかもしれない。みんなヤンキー君の剣幕に怯えて手も足もでない。しかたがないので、勢いで俺がタックル。牛刀を取り上げて窓から放り投げ、あとはヤンキー君を残してみんなで逃げ出した。門のところでみんなでどうしようと相談していると、ヤンキー君が飛び出してきて、仲間から牛刀を取り上げた。こりゃマジでやばい。女子大生はヤンキー君の友人の中でも見込みがありそうな奴のホンダの荷台に押し込んで送り出し、ヤンキー君友人達に挨拶もそこそこに、コテージ村まで奥さんと走って逃げ帰った。コテージを経営しているおっちゃんにヤンキー君が襲ってきたら助けてくれよとお願いして、波の音がうるさいぼろぼろのコテージで眠れない一晩を奥さんと過ごした。途中何度もバイクの音がする度に奴が来たかとびびったが、結局襲ってくることはなかった。翌朝、朝イチの乗り合いバスでホーチミンに逃げ帰ったのは言うまでもない。
そのヤンキー君は美人人妻奥さん友人をなぜか知っていて、とても気に入っていたので、その友人にも危ないから一緒に日本へ帰ろうと勧めたが、彼女も慣れていたのか、ベトナムでは良くあることだよなんていうので、すっかり驚いてしまった。この美人人妻は現在日本で元気に暮らしている。旦那は相変わらず帰ってこないらしい。
 
と、長々と書いてしまったが、事件の途中までしっかり撮影していたので、再び映像を見るとものすごいリアリティ。ホント、何も無くて良かった。要はベトナムはとんでもない国だということ。いつかまたあんな体験をしてみたい(w
ベトナム戦記は今約20年ぶりに読了したが、今読んでも驚く内容。アメリカ本格介入前の話なので、「Platoon」や「Full metal jacket」とは全く違う世界観。雰囲気としては「Good morning Vietnam」や「Killing field(これはカンボジアだが)」の世界観とダブる。当時のベトナムの社会背景が理解できて奥深い。
あ、ベトコンのトンネルで有名なクチトンネルは事件の翌日行ったがお薦めだ。

もう一冊、下のウチの会社で役立ちそうな本も買った。他には司馬先生の街道を行くシリーズを数冊。
しかし、今日の決算短信はなんなんだろう。あんな風に書かれると情けなくて涙が出てくるよ。

失敗の本質―日本軍の組織論的研究 (中公文庫)

失敗の本質―日本軍の組織論的研究 (中公文庫)

*1:さすがに世界中どこにでもいるアメリカ人に一人も会わなかったのには驚いた。