今年最初の一冊:奇跡のリンゴ

昔、親父の実家に遊びに行ったとき、とても驚いたことがあった。今日、「奇跡のリンゴ」を読了してそのことをふと思い出した。
親父の実家は秋田の由利本荘市から車で20分程走ったいわゆる農村にある。子供の頃は、そこで作ったお米を送って貰っていたのだが、子供心にも味が普通の米とは違うのは分かった。とても味が濃くて美味しかったのだ。そして、5年ほど前にばあちゃんの葬式で10年振りぐらいでお邪魔したとき、出してもらったお漬け物の味に驚いた。
茄子の味が違う。まったく別の食べ物の味だった。美味しい美味しいと騒ぐとオクラやキュウリなども出してくれた。どれもこれも味が普段食べているものとは全く違った。今でも思い出せる。とても濃密でエネルギーに満ちた味だった。
その野菜は裏の小さな畑で自分たち用に作っているものだという。特に特別なことはしていないそうだ。無農薬で、肥料もあげていないと聞いた。でも、こんなに味が違う。自分が普段食べている野菜は、水だけで育てたようなスカスカの味だったことに当然気がついた。そして、生鮮野菜も大量生産の均一化された製品だったことに気がついてショックを受けた。
とはいえ、畑を持たない自分にとっては手に入れようがない野菜だ。有機野菜を手に入れればチャンスがあるかもしれないと思い、あちこち手に入れてみたが、あの味までは至らない。どうしようもない衝動を押さえつつ、いつかまた食べられる機会が来るだろうとあきらめるしかなかった。そしていつの間にかそのことを忘れてしまっていた。
 
何の気なしに「奇跡のリンゴ」を読了して上記のことを思い出した。親父の実家でも田んぼには農薬を散布していたことは覚えているが、自分たち用の畑にはこの木村さんと同じようなことをしていたのかもしれない。
AppleがThink Differentのキャンペーンで”To the crazy ones"とやっていたけど、この木村さんも紹介されるべきだなと思う*1コペルニクス的転回をなし得た努力、忍耐力、実現力、創意工夫、なにをとっても、まさにGeniusな人だと思った。他にも日本にはこの木村さんのような凄い農家の人はたくさんいらっしゃるのだろうが、この先出会う機会があるといいなと願う。
 
2009年、この本を最初に読めたことで、幸先良いなと思わせる一冊だった。母親に贈ろっと。

奇跡のリンゴ―「絶対不可能」を覆した農家・木村秋則の記録

奇跡のリンゴ―「絶対不可能」を覆した農家・木村秋則の記録

 

*1:日本人だと黒澤明小澤征爾がバナーで登場してた